ある日の夕方、2通のDMが届く…。
ほぉなんと相手は、現役女子中学生。
30代も半ばに差し掛かろうというオッサンに、懇切丁寧なメールではないか。
しかも、ちゃっかり告白までされちまったよ。ハッハッハ。
冗談はさておき、若者の勇気を無下にするわけにもいくまい。
というわけで夢中さ、きみに。を購入してみた。
連載ものかと思いきや、1巻(8話)完結のオムニバス作品。
ん?ん?ん〜?
1巻完結作品だと?
ここで女子中学生のDMを見返してみよう。
御忙しい中誠に恐縮なのですが、
おいおい、なんて社会人に優しい学生なのだ。
見慣れたビジネスメールの1つだが、こんなものは適当なクッション言葉として使うものであって、実際に相手が忙しいか否かは関係ない。
ところがこの学生は、本当に相手を考慮し、1巻完結のレビューを依頼してきたのだ。
いやはや、なんと素晴らしきことよ。
俺は今、猛烈に感動している。
あえて老婆心をいうなら
Before
御忙しい中誠に恐縮なのですが
After
お忙しいところ恐縮ですが
でOKよ。
して結論からいえば、なかかな楽しんで読めた。
短編だからなるべくネタバレなしでレビューしていくぜ〜。
目次
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夢中さ、きみに。は男子校のとある生徒2人を中心にした物語
前編の主人公は、どこか達観したような掴みどころのない少年。
賛否は分かれそうだが、俺はこいつのシュールな返しが割と好き。
一見なんの変哲もない”一言”や”日常”に、伏線が散りばめてあり、深さはないが、サッと読むにはちょうど良いバランスだ。
後編の主人公は、あえて人に避けられるような行動を取っている。
その理由が、コミュ障を自覚している俺にとっても非常に共感できる内容だった。
本作は、そうした何気ない描写を意識して読むと、2倍楽しめるだろう。
きみは2話目で気づいただろうか?
1話を読んだ時、俺の記憶になにか引っかかりのようなものを感じた。
男子校…地味な主人公…林…。
そのモヤモヤは、2話目で確信に変わった。
2話目は、看板などの文字を拾ってきて繋げる投稿者が描かれている。
その最初の投稿「ク」「ロ」「マ」「ティ」…。
それだ!魁!!クロマティ高校じゃないか。
地味な主人公を起点に様々な視点で描かれる構成は、クロマティ高校そのもの。
特に前編の主人公「林」は、クロマティの神山高志だ。
そして、神山の友達であり、ボケ担当の名は「林田慎二郎…」
うむ、間違いない。クロマティだ。
いや待て待て、冷静に考えて、和山先生の作品をクロマティと同列に並べるのは、いささか失礼な気がしてきた。
クロマティ高校とは、引き算ができれば入れる都内屈指の不良高に真面目な青年が迷い込んでしまう話だ。
ちなみに、夢中さ、きみに。を30倍ギャグに振り切った漫画である。
クロマティ高校といえば、俺の高校生時代を思い出す。
通っていた高校には、一人だけダブリの先輩がいた。
たった一年違うだけなのにクマのようなガタイをし、菊リンみてぇなメガネかけて、二階堂浩平のような異常な目つきで不気味なオーラを発している…。
怖すぎて誰も声をかけれず、とにかく触らぬ不良に祟りなしであった…。
入学した直後の席は名前順になっており、通常であればしばらくそのままだ。
しかし、俺のクラスに目が以上に悪いヤツがいて、ソイツが一番うしろだったため、席替えをしてほしいと言い出した。
席替え方法は即興のあみだくじ…。
俺は4番目だった。
1人目、2、3、俺の番だ。
席は窓際の一番うしろの一つ前になった。
俺(よっしゃっ、いいところ当てたぜ)
その後、5、6、7…と進んでいき、28番目、先輩の番だ。
なんとなくお分かりだろうが、俺のうしろはまだ埋まっていない…。
(お願いします、神様お願いします)
俺にできることがあるとすれば、ただ神に祈ることだけであった…。
そして予定調和のように、先輩は俺の後ろの席を引き当てる…。
この時ほど、学校のプリントを後ろに回すシステムを恨んだことはない。
俺はとにかく刺激しないようにと、絵のモデルにでもなったつもりでやり過ごそうと決意した。
そんなある日、誰かと電話をしに席を立つ先輩…。
ふと振り返ると鞄のチャックが開いていた。
自動販売機の下ほどの隙間から、覗かせるのは「クロマティ高校」の7文字…。
えっ?どっからどう見ても仮釈放中だろって先輩がクロマティ読んでるの?
こっこれは…触れてよいのか…高校時代もっとも困惑した事件の一つだ。
しかし、俺もイチ漫画好きとしての血が騒ぐ。
最悪ぶん殴られる覚悟を決め、休み時間に声をかけようと決意する。
俺は足を震わせながら「あっあっあの、〇〇さん、自分、竹野内豊が一番好きっす」
緊張のあまり俺の思考は完全に停止しており、一度も会話したことのない先輩への第一声がこれである。
先輩「あっ?」
ギロリと睨まれ、思わず目をそらす…。
俺(やべっ↓これ完全に地雷踏んだわ、うずまきの桶があったら入りたい…)
次の瞬間、いきなり肩を組まれ「えっ?なに?お前もクロ高読んでんのかよ?」
俺「あっはい、自分漫画めっちゃ好きでして、クロマティ高校も読んでます」
先輩「はははっマジかよっ、俺は前田のおふくろが好きだわ」
俺(あっ先輩の笑い声はじめて聞いたかも…もしかしたら顔面がクッソ怖いだけで、本当は優しい人なのかな?そう思うと無性にかわいく見えた)
その日から、クローズ、特攻、 BADBOYS、純愛組、ビーバップ、湘爆など、持っていた不良漫画の話をしてみたら、先輩も結構読んでいた。
先輩「いや〜お前めちゃくちゃマンガ読んでんじゃん、お前なら友達になれそうだわ」
俺「それは承諾しかねます」
先輩「あっ?」
俺「先輩、俺は友達ではなく後輩っすよ」
先輩「ハハまぁそうだよな、じゃあ今日も昼飯頼むわ」
俺「はい、わかりました…」
そう言って、今日も先輩のうしろ姿に殺意を抱きながら、走ってメロンパンとカフェオレを買いに行くのであった…。
あの優しい笑顔は、使える獲物を見つけた悪い笑顔だったのだろう。
本当に1ミクロンもかわいくない…。
結論:夢中さ、きみに。は人と人を繋ぐ物語
以上が夢中さ、きみに。を読んだ感想だ。
女子中学生のDMから始まり、先輩との苦い思い出に繋がった本作は、なんとなく不思議な縁を感じた。
1巻完結のため、作品の趣旨にはなるべく触れなかったが、当たり前にある日常を独特な切り口で表現する点は絶妙な面白さがある。
気になった方は、ぜひお手にとって見てくれ。
作者 | 野中 英次 |
出版社 | 講談社 |
掲載誌 | 週刊少年マガジン |
発売日 | 2001年2月16日 |
完結 | 17巻 |
俺の一言 | 作者イカれてる |
おっと間違えた。
感想を書いてて思ったけど、クロマティ高校…全然関係なかったわ…。
作者 | 和山 やま |
出版社 | KADOKAWA |
掲載誌 | ビームコミックス |
発売日 | 2019年8月10日 |
完結 | 1巻 |
俺の一言 | 一応BL枠みたいよ |
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